リニアブッシュの種類と選定方法 - FACTY合同会社

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リニアブッシュの種類と選定方法

リニアブッシュの種類と選定方法

本記事では、XYZステージや搬送装置、治具設計などで使われる リニアブッシュの種類と選定方法 を初心者向けに丁寧に解説します。代表的なタイプ(標準形・オープン形・フランジ形・ユニット形)に加え、用途別の選び方、シャフト材質との適合、公差設計、寿命計算まで網羅し、現場で失敗しない選定スキルが身につく内容になっています。

リニアブッシュとは?|用途と構造の基本

リニアブッシュ(Linear Bushing)は、内外筒の間に鋼球を内蔵した構造で、直線運動時に転がり摩擦で滑らかな摺動を実現する直動案内部品です。主に丸シャフトとの組み合わせで使用され、装置の軽量化、コストダウン、保守性向上に貢献します。

主な使用用途は以下の通りです:

  • XYZステージの精密位置決め
  • 搬送装置の直線ガイド部
  • 治具・検査装置の可動部支持
  • 軽荷重の簡易直動案内

リニアブッシュの種類と特徴比較

種類構造剛性組付け性価格主な用途推奨シャフト材質
標準形(クローズド)筒状一般機構、スライド、XYガイドSCM440 焼入研磨軸(HRC58以上)
オープン形スリット入長ストローク/たわみ補正SCM材またはSUS440C(直線性良好品)
フランジ形端面取付付き端部固定・治具などSUS440C/SCM440
ユニット形ハウジング組込モジュール・組立済み用途SUS440C/高硬度シャフト(ナイター処理)
ボールリテーナ式金属保持器高精度位置決めSK材(真円度・硬度重視)
樹脂一体型すべり案内型簡易ガイド、軽荷重表面硬化S45Cまたはアルミ専用軸

用途別おすすめリニアブッシュ早見表

用途/条件推奨タイプ備考
XYZステージ標準形 or ユニット形高剛性・低すきま重視
高速搬送装置オープン形長ストローク対応、逃げ付き
治具・検査装置フランジ形端面固定が容易
簡易スライド樹脂一体型コスト重視、軽負荷

シャフトとの適合と選定基準

シャフト材質の選定基準

  • 硬度: HRC58以上(特にSCM440焼入れ・SUS440C焼入れが推奨)
  • 表面粗さ: Ra 0.2μm以下推奨(鏡面仕上げに近い)
  • 真円度/円筒度: 0.005mm以内(精密軸)
  • 形状精度: たわみ量0.01mm/m以下が望ましい

公差とクリアランス設計

シャフト径推奨公差適合ブッシュ想定クリアランス
φ20h6(0 / -0.013)標準形/フランジ形0~0.022 mm
φ20h7(0 / -0.021)簡易形0~0.030 mm
φ20g6(-0.007 / -0.020)圧入用・一体型圧入前提

注意点として、クリアランスが大きすぎるとがたつきが発生し、精度や寿命が大きく低下します。一方、ゼロクリアランスでは摺動抵抗が高くなるため、用途に応じた最適値を選定してください。

荷重と寿命計算|L10寿命の求め方

    \[ L_{10} = \left( \frac{C}{P} \right)^3 \times 10^6 \quad [\text{mm}] \]

例:定格荷重 C = 980\,\text{N}、作用荷重 P = 245\,\text{N} のとき、

    \[ L_{10} = \left( \frac{980}{245} \right)^3 \times 10^6 = 64 \times 10^6 = 64\,\text{km} \]

軸径選定の計算例

    \[ F = 400\,\text{N},\quad n = 2,\quad L = 30 \times 10^6\,\text{mm} \]

    \[ P = \frac{F}{n} = 200\,\text{N},\quad C = P \cdot \left( \frac{L}{10^6} \right)^{1/3} \approx 622\,\text{N} \]

⇒ 定格荷重622N以上のリニアブッシュを選定。

まとめ|リニアブッシュ選定の5つの鉄則

  1. 用途に応じた種類を使い分ける(剛性/組付け性/価格)
  2. 荷重条件と寿命を見積もる(L10寿命)
  3. シャフトの材質と精度が性能を決定づける
  4. クリアランス設計を適切に行う(公差との関係)
  5. 組立と保守も含めてトータルで選ぶ(ユニットや樹脂型の活用)

これらを押さえれば、初心者でも現場で通用するリニアブッシュ設計が実現できます。

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