シリンダの推力計算ガイド - FACTY合同会社

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シリンダの推力計算ガイド

エアシリンダの推力計算ガイド|シリンダ選定に役立つ計算式と早見表

1. シリンダ推力の基本計算式

エアシリンダの推力(押し・引き)は、空気圧とピストンの有効面積から求められます。単位は SI 単位系(N, mm, MPa)で統一します。

押し動作(伸長時)の推力

    \[ F_{\text{out}} = P \cdot A = P \cdot \frac{\pi D^2}{4} \]

  • F_{\text{out}}:押し方向の推力 [N]
  • P:供給空気圧 [MPa]
  • D:シリンダの内径(ボア径) [mm]

引き動作(収縮時)の推力

    \[ F_{\text{in}} = P \cdot \left( \frac{\pi D^2}{4} - \frac{\pi d^2}{4} \right) = P \cdot \frac{\pi (D^2 - d^2)}{4} \]

  • F_{\text{in}}:引き方向の推力 [N]
  • d:ロッド径 [mm](代表値はSMC準拠)

2. 伸長/収縮時で推力が異なる理由

収縮時は、ロッドがある分だけ有効断面積が小さくなり、押し動作よりも推力が小さくなります。この差は、ロッド径が大きいほど顕著になります。

3. φ4〜φ50までの推力早見表(P = 0.5 MPa)

ボア径 D [mm]ロッド径 d [mm]押し推力 Fout [N]引き推力 Fin [N]
41.56.285.52
62.514.1412.27
103.039.2735.74
165.0100.5390.63
206.0157.08140.79
258.0245.44214.52
3210.0402.12344.31
4012.0628.32553.58
5016.0981.75779.29

※推力はすべて理論値(摩擦・圧力損失を無視)です。

4. 実務でのシリンダ推力計算例

ここでは「1kgのワークを搬送する用途」において、φ10シリンダ(ロッド径φ6)を使用する場合の推力を計算します。

  • 質量:1kg
  • 必要推力:1 \times 9.8 = 9.8 \, \mathrm{N}(重力加速度 9.8\, \mathrm{m/s^2}
  • 供給圧力:0.5MPa
  • 内径:φ10mm / ロッド径:φ6mm

伸長時の推力:

    \[ F_{\text{伸長}} = 0.5 \times \frac{\pi \cdot 10^2}{4} = 39.3 \, \mathrm{N} \]

収縮時の推力:

    \[ F_{\text{収縮}} = 0.5 \times \left( \frac{\pi \cdot 10^2}{4} - \frac{\pi \cdot 6^2}{4} \right) = 31.6 \, \mathrm{N} \]

必要推力(9.8N)を大きく上回っており、搬送用途としては安全率を十分確保できることが確認できます。

5. シリンダの使用方向による推力の補正|水平・垂直使用時の計算式

エアシリンダの推力は方向によって補正が必要です。特に垂直方向に使用する場合、重力の影響を加味する必要があります。以下に方向別の考慮ポイントと計算式を示します。

水平使用時(摩擦のみ考慮)

必要な推力 F_{\text{必要}} は、搬送負荷に対する摩擦抵抗を加えたものです:

    \[ F_{\text{必要}} = F_{\text{負荷}} + F_{\text{摩擦}} \quad [\text{N}] \]

摩擦力は以下で求めます:

    \[ F_{\text{摩擦}} = \mu \cdot N \quad [\text{N}] \]

  • F:力(推力、摩擦力などの総称)[N]
  • \mu:摩擦係数(例:0.1 ~ 0.3)
  • N:物体の重量に対する垂直抗力 [N]
    (水平面なら N = m \cdot g
  • m:質量 [kg]
  • g:重力加速度 9.8\, \text{m/s}^2

垂直使用時(重力の影響を考慮)

重力の影響を加味した必要推力は次式で求められます:

    \[ F_{\text{必要}} = F_{\text{負荷}} + m \cdot g \quad [\text{N}] \]

  • F:力(重力や推力)[N]
  • m:持ち上げる質量 [kg]
  • g:重力加速度 9.8\, \text{m/s}^2
  • F_{\text{負荷}}:その他の外力 [N]

例:垂直に5 kgのワークを持ち上げる場合

    \[ F_{\text{必要}} = 0 + 5.0 \cdot 9.8 = 49.0 \, \text{N} \]

この49N以上の引き/押し推力が必要となります(使用方向に応じて)。摩擦や安全率を考慮し、余裕を持ったシリンダ選定が重要です。

6. まとめ|シリンダ選定のための推力計算式を理解する

エアシリンダの正確な推力を把握することは、装置の信頼性・選定の妥当性に直結します。本記事で紹介した「シリンダ計算式」と「推力早見表」を活用し、設計の初期段階から適切なシリンダ選定を行いましょう。

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