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電磁弁の選定ガイド
電磁弁の選定ガイド|エアシリンダ制御
電磁弁の選定はエアシリンダ動作の信頼性を左右します。本ガイドでは弁の種類・圧力・電気仕様・口径・応答速度・寿命を体系的に整理し、設計初心者〜中堅技術者が最適な電磁弁を選べるように解説します。
電磁弁とは
電磁弁(solenoid valve)はコイルに電流を流すことでプランジャを吸引し、弁の開閉を行うアクチュエータです。ISO 5599-1 や JIS B 8374 ではポート数と位置数で分類されますが、実際の選定では単動/複動(アクチュエータ側)やセンター形状も重要な評価軸となります。
弁の種類(単動/複動、ポート数・位置数、センター形状)
1. 単動(Single-acting)用電磁弁
単動エアシリンダは片側のみ加圧し、復帰をスプリングや重量で行います。代表的な構成は 3 ポート 2 位置 で、動作は次の 2 ステップです。
- P → A:加圧してシリンダを伸長
- A → R:排気し、ばねで復帰
- 省ポート・軽量・低コスト
- 応答が速いが、戻り側推力は制御不可
2. 複動(Double-acting)用電磁弁
複動エアシリンダは両側を加圧制御します。一般的には 5 ポート 2 位置 を使用します。
- P → A、B → R:伸長
- P → B、A → R:収縮
- 伸長・収縮とも高推力で精密制御
- ストッパシリンダや押え機構など多用途
3. 3 位置(センター付)電磁弁
3 位置弁は中立位置でエア回路を切り替え、機械を保護する機能を持ちます。複動シリンダ制御が主用途です。
センター形状 | 配列例(中央位置) | 機能 | 用途 |
---|---|---|---|
エキゾーストセンター | A,B ⇆ R(大気) P 閉止 | 両室排気で急停止 | 高速搬送ラインの緊急停止 |
クローズドセンター | P,A,B,R すべて閉 | 圧力・位置保持 | ワーククランプ保持、安全保持 |
プレッシャセンター | P ⇆ A,B R 閉止 | 両室加圧で衝撃緩和 | リフター・位置決め時の押付け保持 |
4. 3 ポート vs 5 ポート の早見表
項目 | 3 ポート 2 位置 | 5 ポート 2 位置 |
---|---|---|
主な用途 | 単動シリンダ/真空吸着破壊/小流量ブロー | 複動シリンダ/ロッドレスシリンダ/グリッパ |
メリット |
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デメリット |
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使用圧力と流体
空圧機器用電磁弁は通常 0.15 MPa〜0.7 MPa の乾燥空気を想定します。JIS B 8391-1 に従い、露点 −20 °C 以下が推奨です。
電気仕様(DC/AC、電圧、消費電力)
- 代表値:DC 24 V 2.0 W / AC 100 V 3.5 VA
- AC はインラッシュ電流が大きく、抑制回路が必要
- DC は発熱が少なく静音
接続口径・チューブ径
エアシリンダ φ12 mm クラスでは Rc 1/8 〜 Rc 1/4、チューブ外径 φ6 が一般的です。
応答速度・頻度
- 標準応答:15 ms(DC)、10 ms(AC)
- 高頻度タイプ:30 Hz 以上
寿命・メンテナンス性
主要部品は 2,000 万サイクル以上(JIS B 8375 寿命試験)を目安にします。コイル絶縁クラスとシール材質(ニトリル、フッ素)も確認します。
選定フローと計算例
ステップ1:必要推力の算定
シリンダ内径 φ12 mm、供給圧力 の場合、作用面積
は
推力 は
ステップ2:必要流量と Cv 値
ストローク 50 mm、充填時間 0.6 s とすると、シリンダ容積は
常用圧力を大気圧へ換算した自由空気量 は
これを L/min へ換算:
必要 Cv 値(ISO 6358 相当)は
カタログ Cv ≥ 0.03 の 5 ポート 2 位置電磁弁を選定すると余裕を持てます。
ステップ3:電磁弁仕様の決定
- 弁種別:5 ポート 2 位置 スプール式
- 作動方式:内部パイロット(最低作動圧 0.25 MPa)
- Cv 値:0.3
- コイル:DC 24 V・2.0 W(サージ吸収ダイオード付)
- ポート:Rc 1/8/ワンタッチ継手 φ6 対応
- 応答:15 ms
- 電気保護:IP65(IEC 60529)
まとめ
電磁弁選定では 単動/複動、ポート数・位置数、さらにはセンター形状まで含めて比較検討し、使用圧力・電気仕様・Cv・応答速度・寿命を総合評価することが重要です。メリット・デメリットを押さえた上でカタログ値を照合し、エアシリンダ制御に最適な電磁弁を選定しましょう。